坊がつるコースを行く・平治岳[1642.8m]
大戸越 → 平治岳山頂(約40分)
大戸越は、男池からソババッケを経由してきた登山者で賑わいを見せている。
左手を見上げると、ピンクに染まる北斜面に左右二手に人の列が見える。
右手の列が登り専用で左手は下り専用とされ、
案内板
も立てられている。
さて、ここで一息つき大きく深呼吸すればいい。
山頂までおよそ30分の登路ではあるが、急坂が続き40分以上かけたがいい。
足を休めたら、登り専用の案内板を見て、平治岳へ登り始める。
道は、ミヤマキリシマの中を分け入るように蛇行し伸びている。
ゆるやかな登りは次第に傾斜を強め、帽子のつばから汗が滴り落ちる。
左手に目を移すと三俣山、その左手に硫黄山から立ち上る白い噴煙が目に付く。
山頂を見上げると、岩場に這う登山者の姿が小さく見える。
山頂への道は狭く、ミヤマキリシマや潅木の枝が体をさわる。
ここは半袖は禁物、長袖がいい。
途中、一息つき振り返ると
大戸越で賑わう登山者
の姿が小さく見える。
左手には、坊がつるも眼下に見えてくる。
大戸越から10分も登ると、岩場は目前に迫りさらに1、2分岩場に達する。
岩場にはロープが2重に掛けられ、ロープを手に足場を確認しながら登っていく。
岩場を登りきると、歩きやすくなる。
少し行くと、道は┫字形に分岐する。
直進した方が登りやすい。左にとると滑りやすく
ロープ
が張られている。
ロープを手に登りきると
傾斜は幾分ゆるみ
、振り返り眼下を見下ろすと、大戸越にひと時を楽しむ登山者が、米粒より小さく見える。
正面には
南峰の岩
が目前に見えてくる。
左手へ寄るように登るとやっと南峰に着く。
岩場を一回りするように右手から回りこむと、正面西側に中岳と天狗ヶ城が対になった姿を見せてくれる。
右手には、硫黄山が相変わらず白い噴煙を舞い上げている。
その右手には三俣山が全容を見せている。
眼下には坊がつるの全域が一望され絶景中の絶景が広がる。
振り返るとピンク一色に彩られた
平治岳北峰
に感嘆する。
展望を楽しんだら、数メートルバックして
ミヤマキリシマの群生地
を行く。
正面には、何度見ても見飽きない北峰に目がいく。
ミヤマキリシマの群生に伸びる狭い道を4、5分も行くと
北峰との鞍部
に着く。
ここで昼食をとる登山者も多い。
辺りは、視界全体がピンクに染められ、どんな名画にも劣らぬ現実の光景に、どの顔も微笑み感動の声が響き渡る。
中には、感動を押さえきれず両手を挙げ、童心に返って万歳する人もいる。
その感動が、倍になって辺りに漂い山全体を覆う。
ここに、平治岳を訪れた登山者の、生涯忘れ得ぬ思い出として深く刻み込まれる。
さて、感動の余韻を消すまいと、しっかり胸にしまい込み北峰へゆるやかに登っていく。
道は次第に傾斜を強め、
ミゾ道
の状態になる。
さらに岩も多く簡単に登頂を許してくれない。
道沿いには、虫に食われ開花できずに茶褐色に枯れたつぼみも多く心痛める。
北峰への道は一本道で、下る登山者に待たされ距離以上に時間がかかる。
登り優先と言えども、下る人は元気で勇ましく、その元気に待たされてしまう。
しかし10分とかからない。
山頂からの展望は、登路に見た一つ一つの光景が集大成され一望できる。
西側に中岳・三俣山を見て少し右手へ目を引くと
涌蓋山
が、南には
北大船山の稜線の背後に大船山
の山頂が望まれる。
東側には黒岳の天狗も仰ぐことができる。
西側へ尾根伝いに少し下り、岩場から見るダイナミックな展望も素晴らしい。
平治岳は、ミヤマキリシマの時期が一番いい。
何度来ても感嘆する。そして大きく膨らんだこの感動は、家庭でも、職場でも抑えることはできず、つい言葉が出てしまう。余韻はいつまでも消えない。