草原を流れる風がいい・阿蘇烏帽子岳[ 1337.2m]・杵島岳[ 1270m]
展望所〜鞍部(30分)
展望所にはベンチが置かれ一息つくといい。
南側には絵よりも
美しい烏帽子岳
に、五感は奪われる。
烏帽子岳山頂に端を発した尾根の中腹辺りで、そよ風と戯れ遊んだひと時の想いに頭は支配され、感動めいたもので胸は高まる。
ベンチの横には道標が立てられているが、文字がはっきりしない。
ここには皇后陛下も御立ちになられたという記念柱が立てられている。
さて一息ついて直進し、ゆるやかに下っていく。
右手へカーブすると、正面に杵島岳の大きな南側斜面が視界を覆う。
さらに左手へカーブし下って行くと、薄い踏み跡が
右手へ分岐
する。
その先10mほどのところに道標が立てられている。
しかし、文字ははっきりしない。
目指す杵島岳は、この分岐を右折し薄い踏み跡をゆるやかに登っていく。
正面に、ミヤマキリシマが花開く丘陵の背後には、高岳がそして鷲ヶ峰が姿を現す。
1〜2分も行くと、道は右手へカーブし下りだす。
数メートルも行くと右手に道標が立てられ「遊歩道」と書かれている。
道標の前から左手へミヤマキリシマが咲く潅木の中へ踏み込んでいく。
道はV字状に分かれ左手に取り、ミゾ道を行く。
潅木の道はすぐ抜け出し、丘陵へ登って行く。
穏やかに見えた丘陵は急坂ではないが、
決してゆるやかではない
。
見えた以上に傾斜は大きい。
しかし、辺りに咲き誇るミヤマキリシマに気を寄せ、美しさに感謝すれば疲れは半減する。
少し登ると次第に傾斜はゆるんでくる。
しかし、なかなかピークはこない。
穏やかな丘陵を横に見たのが間違いで、穏やかな丘陵は縦に続く。
一歩足を止め右手に目を移すと、高岳の岩稜が程よく望まれる。岩稜の左手には鷲ヶ峰の岩峰もはっきり見て取れる。
一息ついて、さらにミツバツツジの中を登って行く。
この辺りも葉を落としたミツバツツジが多い。
ここでも、枯れ枝に咲く花びらが痛ましく見える。
道はさらに傾斜をゆるめ、
痛ましいミヤマキリシマ
が生える道を登って行く。
左手には、烏帽子岳から見た緑一色に厚化粧をした穏やかな杵島岳の山容とは大きく異なり、峻険な様相を見せつける。
道は、さらに傾斜をゆるめ、ゆるやかに下りだす。
正面には、坊主頭のようにこんもりと盛り上がったコブを見る。
その左手には、杵島岳によく似て緑に包まれた往生岳が目を引く。
左手眼下に目をやると、ここも
火口跡
なのか、大きな窪地が広がりその中央部にわずかばかりの水を蓄えた小池を見る。
ゆるやかに下ると、左手に細い木柱を見る。
道は尾根筋を右手へ離れ、少し下り狭い道を行く。
木柱を見て1分余り行くと裸地になる。
左手に木柱を見て、平らな道を数メートル進み、正面に咲くミヤマキリシマを避け右手へ下って行くと、右手に
また木柱
を見る。
木柱の背後を飾る高岳中腹に位置する中岳火口から、絶え間なく白い噴煙が立ち上る。
木柱に文字は見られない。
さらに尾根筋に立ち、裸地を行く。
狭い道には草木が生い茂り、かき分けながら北側へ歩を進めていく。
道は、幾筋か見られるが、足に任せても行く手は変わらず、草木に隠れる道もしっかり踏み固められ踏みはずすことはない。
足任せに行くと、道は傾斜をゆるめほぼ平らになる。
途中足元には、
小さな石積み
を見る。
すぐ先の左手にも木柱を見る。
狭い道はゆるやかに登りだし、狭い潅木に隠れる道を少し行くと展望が開け、正面ピークを目前に見る。
さらに草木をかき分け狭い道をゆるやかに登って行く。
草木を抜けるとピークに登りつき、左手に木柱を見る。
ピークに立って一息つき、360度得られる展望を楽しめばいい。
正面眼下には、高森町辺りか田園風景を見渡しながらピークを下っていく。
相変わらず道は狭く、手で草木をかき分け足で探るように下っていく。
この斜面にはグミの木も多い。
ピークを下りきるころ、右手にまた木柱を見る。
左手窪地の中に、これも火口跡なのか気持ちのよさそうな
丸い窪地
が目を引く。
道はすぐ右手へカーブし、ほぼ平らな道を行くと尾根筋の左手をゆるやかに登りだす。
そして右手へカーブし四方見渡せる尾根筋をいく。
ゆるやかな登りはさらに傾斜をゆるめてくれる。
左手北側に目を向けると、急峻な杵島岳の南斜面が見渡せる。
さらに振り返ると、狭い道を歩いてきたミヤマキリシマが咲く尾根の北側斜面は景色を一変させ、自然林に斜面を覆いつくされ、原生林の様相を見せている。
ゆるやかな傾斜は、気がつかぬ間にゆるやかに下りだす。
正面には、緑一色の草原に包まれた往生岳が視界に広がる。
民話によれば、阿蘇を造ったのはタケイワタツノミコトだとされ、ミコトは弓を射るのが楽しみで、ある日正面に見える別名ドベン岳とも呼ばれる往生岳に座り、西外輪山中腹にある的石と呼ばれる大岩に向かって射られたという。
往生岳に見る幾筋かのひだは、ミコトの尿が流れた跡だと紹介されている。
往生岳を目前に、この辺りで腰を降ろし、小休止したらいい。
寝転んで天を仰ぐ時間を持っていれば、持たぬ人との差は大きい。
足の疲れは遠のき、体は休まる。しかしそれ以上に気分はいい。
童心に返って、「ヤッホー」と叫べば、杵島岳からこだまが返ってくる。
しかし、童心に返るには勇気がいるが、ここでは出さずにはいられない。
そして自然に浄化された空気を精一杯吸い込み、体に元気を蓄えゆるやかな傾斜を下っていく。
少し下ると、左手へカーブし傾斜は増してくる。
この斜面に生える潅木は焼け焦げ、野焼きされたかどの木も黒ずんでいる。
道は幾筋かに分岐し、足に任せ下っていく。
正面を見上げると、45度を越えるような
急斜面
が目前に迫る。
一時足を休め左手に目をやると、原生林の穏やかな稜線が、枯れたミヤマキリシマに重なり物悲しく映る。